猫の血栓塞栓症
猫の血栓塞栓症
血栓塞栓症とは心疾患のある猫に見られる合併症であり、動脈内に血栓ができて血管が閉塞してしまい、緊急性の高い致死的な病気です。
突然、激しい痛みや麻痺などが生じるため、飼い主さんが驚くことも少なくありません。
猫で見られる血栓塞栓症の多くの原因は心臓病です。
肥大型心筋症による血液循環の異常によって主に後肢に向かう動脈内に血栓が形成され、血管の閉塞が引き起こされます。
肥大型心筋症を発症している猫の33〜50%は大動脈血栓塞栓症が見られるともいわれています。
血栓塞栓症が起こると、次のような症状が突然現れます。
・足を引きずる、動かさなくなる
・突然ギャーっと大声で鳴く(強い痛みがあるため)
・呼吸が速くなる、呼吸困難になる
・足の先が冷たくなる
・肉球の色が紫色になる
・体温が低くなる
また致死率が高いという特徴があり、特に両足に起こった場合は予後が悪く、生存率は30〜40%程度だといわれています。
血栓溶解療法によって血流が再開しない場合には後肢の麻痺や壊死が残る可能性があります。このため、当院では積極的な治療法の一つとして血栓を手術で除去する治療を行っています。ただし、この手術は血栓の発症から早期(3日目以内)に実施する必要があり、手術までの時間が遅くなるほど機能障害の残る可能性が高くなります。また、手術には麻酔のリスクや術後の合併症など大きなリスクを伴います。
血栓塞栓症の多くは突然発症するため、事前に予測することは困難であり、基礎疾患の管理が重要となります。特に、猫の心筋症では血栓塞栓症を合併するリスクが高いので、定期的な検査が不可欠です。血栓塞栓症について気になることや上記のような類似する症状がある場合は、当院へご相談ください。